『帝国議会誌』第12巻

1976年6月

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第六一回帝国議会 貴族院・衆議院解説


 

古屋 哲夫

 

第六一回帝国議会 貴族院解説
第六一回帝国議会 衆議院解説

第六一回帝国議会 衆議院解説
血盟団事件
第一八回総選挙
第六一回議会の召集
内閣改造問題
衆議院の状況

第六一回帝国議会 衆議院解説



血盟団事件

 第60回議会が解散されて選挙戦が展開されているさなかには、上海事変(「第六一回帝国議会貴族院解説」参照)やハルビン占領作戦など国民の関心を惹きつけるような戦闘が行われており、従って選挙気分はもう1つ盛り上がらなかった。しかもそのうえ、政党政治そのものを否定しようとする勢力によるテロ行為まであらわれ、選挙戦は一層かくらんされる結果となった。 井上準之助暗殺により第1弾が放たれた血盟団事件がそれである。

  2月8日午後8時少し前、民政党公認・駒井重次候補の応援演説のため、会場の本郷・駒本小学校に車を 乗りつけた井上準之助は、降りて5、6歩あるき出した時、出迎えの群衆のなかから躍り出た小沼正にピス トル3発を打ち込まれた。彼はすぐさま東大病院に運ばれたがすでに絶命しており、ほとんど即死同様であったという。井上は浜口・若槻内閣の蔵相として金解禁政策の推進者であったが、今回の総選挙にあたっては、民政党選挙委員長として選挙資金の調達に、選挙運動の指導にと奔走していたところであった。

  警察側はこの事件の背後関係を追及したが、血盟団の存在をつかみえないうちに、3月5日午前11時半、 今度は三井銀行玄関前で三井合名理事長・団琢磨が菱沼五郎によって暗殺されるという事件が起こった。そ してここではじめて、小沼・菱沼が同郷(茨城県)であり、その郷里において井上日召・古内栄司らの指導をうけていたことが明らかとなり、血盟団の存在が浮かび上がってくることになった。

  血盟団と呼ばれたのは(彼等自身がそう名乗ったわけではない)、井上日召を中心にした集まりであり、彼が茨城県大洗の海岸にある護国堂(日蓮宗系の寺)に在住していた時期(昭和3年暮から昭和5年10月)から次第に形成されていたものであった。青年時代大陸浪人的生活を送った井上は、大正9年末に帰国してからは、右翼的な国家改造を志向するようになり、護国堂に入るやまず付近の小学校の先生で人生問題に悩んでいた古内栄司に彼の信念を吹き込んで同志とし、さら に古内を通じて小沼正・菱沼五郎・黒沢大二・川崎長光らに強い影響をあたえていった。しかし彼は最初から非合法手段による国家改造を考えていたわけではなかった。彼が次第に非合法主義に傾いていったのは、海軍青年将校との接触によるものであり、そのきっかけは昭和5年1月頃、霞ケ浦航空隊に居た海軍側青年将校運動のりーダー・藤井斉と知り合ってからであった。この昭和5年と言う年は、右翼・軍部がロンドン海軍軍縮条約反対運動のなかで結束を深めていった年であり、そのなかで桜会にみられるような武力クーデターの思想も拡まりつつあった(「第五九回帝国議会衆議院解説」参照)。すでに古内らの農村青年グループと藤井らの海軍青年将校グループとを結びつける立場に立っていた井上は、こうした状況のなかで、昭和5年10月上京し、「国家革新」運動の渦中にとび込んでゆくことになる。

  上京した井上はまず、安岡正篤の金鶏学院に止宿、そこで四元義隆・池袋正釟郎らの学生と接触、久木田祐弘・須田太郎・田中邦雄らを加えた学生グループを新たな同志として獲得することができた。こうして、茨城の農村青年と東京の学生グルーブという2つの集団を傘下におさめた井上は、民間急進派のりーダーに成長してゆくことになり、また藤井を通じて、西田税及びその影響下にある陸軍青年将校とも連絡をもつことになる。昭和5年暮頃から西田(陸軍)・藤井(海軍)・井上(民間)という三派の提携が深められ、井上も橋本欣五郎らの企画した軍事クーデター計画(10月事件)に参加してゆくことになるが、その過程で井上はすでに要人暗殺の方向に傾いていったとみられる。 10月事件が未然に発覚して失敗に終わったのちも、井上はさきの三派の提携による独白の運動の展開を主張したが、荒木新陸相の登場に期待をかけた陸軍青年将校側は非合法運動に消極的となり、ここから陸軍側 と分かれた海軍側及び井上一派により、血盟団事件、 5・15事件が起こされることになった。

  昭和7年1月9日、代々木上原の権藤成卿が管理する空屋で、古賀清志ら海軍青年将校と、井上日召・古内栄司・四元義隆らが会合、ここで2月11日の紀元節を期して財界政界特権階級の巨頭を暗殺するという方針が決定された。しかし1月28日に上海事変が勃発し藤井以下の海軍青年将校らが出征することとなったため、予定は変更され、議会解散10日後の1月31日、前記権藤空家で再び聞かれた会合では、海軍側と民間側を2分し、まず井上一派が第1陣として1人一殺による暗殺を実行する、つづいて第2陣として海軍青年将校が蹶起するという新しい計画がたてられた。小沼・菱沼による井上・団暗殺はこの第1陣の実行であった。

  小沼・菱沼の取調べにより、農民・学生両グループよりなる井上一派=血盟団の存在が明らかにされ、頭山秀三(頭山満の三男)の経営する天行会道場2階に潜伏していた井上日召も、3月11日警視庁に自首し た。しかしこの1人一殺による血盟団事件が計画の第1陣であることは明らかにされず、次の第2陣としての5・15事件を予防することは出来なかった。



第一八回総選挙

 血盟団事件に脅かされながら進められた選挙戦では、最初から政友会有利が予想されていた。不況に悩まされている民衆の間には、政友会の積極政策に期待する気分が強かったし、また満州事変によって民政党が看板政策としてきた幣原外交路線が崩壊してしまったこ とも民政党に痛手であった。政友・民政ともに満州事変積極支持という点では変わりがなくなっていた。従って両党は経済政策の相違を強調しようとし、政友会は、無謀な金解禁と消極政策が不況を招いたと民政党を攻撃し、産業5ケ年計画樹立のスローガンを掲げて、積極=インフレ政策の方向を示した。これに対して、民政党は、政友会は金輸出再禁止により財閥に不当な利益を与えたと非難し、産業の統制・合理化をすすめて、金本位制を再建することを主張した。

  しかし不況は選挙戦そのものにも大きな影響を及ぼしており、選挙資金調達の困難から立候補の出足は悪 く、届出2日目でようやく定員数をこえるという有様であった。結局立候補者は前回総選挙より100名以上も少なく、また定員一ぱいの立候補で無投票当選の選挙区が増加したこともこの選挙の特色であった(後掲、当選者一覧表参照)。そしてこうした少数激戦の様相は、二大政党対立の傾向を強める要因ともなっていた。大正12年以来、実業同志会→国民同志会をひきいて活躍してきた武藤山治が、議会解散直後に立候補断念を 声明、1月24日の国民同志会役員大会で同会解消が決定されたことは小政党が発展する可能性のなくなってきたことを象徴するものであった。  同じことは無産政党についても言えた。無産政党立候補者も、前回の101名から36名へと激減、またかつては「輝やける委員長」として人気を集めていた大山郁夫も、この選挙には立候補しなかったばかりでなく、第61回議会召集の前日、3月17日にはアメ リカに向け出発し、以後第二次大戦後まで日本にもどらなかった。こうしたきびしい情勢の下でも、無産政党間の選挙協定は成立せず、とくに東京第5区では社会民衆党から松岡駒吉、全国労農大衆党から麻生久、その上さらに労大党を脱党した加藤勘十という3人の有力候補者が対立するという事態さえあらわれた。結局、15,786票をとった麻生も次点で落選したが、加藤の10,028票、松岡の6,565票をみれば、候補者を1人にしばれれば当選の可能性のある選挙区であった。

  無産政党間の対立はむしろ激化していると言ってもよかった。隣の東京第4区では、労大党候補者浅沼稲次郎の支持者約40名が、社民党候補者馬島|の選挙事務所に殴り込みをかけるという事件が2月18日におこっている。事のねこりは馬島側が浅沼は満州事変に反対しているというビラをまいたことであったが、事変に対する態度は両党のちがいを示す最も大きな問題となっていた。社民党は「満蒙の権益を民衆の手へ」 とのスローガンによって満州事変を支持したが、労大党は「帝国主義戦争絶対反対」を選挙スローガンに加えていた。しかし同党内でも東京第6区から当選した松谷与二郎のように、満州事変を支持し、国家社会主義の方向に歩んでいた者もあったが、同党候補者の多くはまだ事変への批判的態度を保っていた。官憲側の報告も「満蒙問題ニ関シテハ同党ノ候補者中松谷与二郎・三宅正一ヲ除キテハ何レモ『帝国主義戦争絶対反対』ノ立場ヨリ「対支出兵絶対反対、対支内政干渉反対』ニ言及シタルタメ、言論ノ中止ヲ命ゼラレタルモノ多ク」と記している(内務省警保局「社会運動ノ状況・ 昭和七年」775頁)。 

普選施行後三回ニ亙ル無産政党ノ得票数比較
(施行年月) 候補者数 当選者数 無産派得票総数 同左1人当平均得票数
第一回(昭和3年2月) 88 8 489,753 5,502
第二回(昭和5年2月) 101 5 524,018 5,188
第三回(昭和7年2月) 36 5 291,349 8,093

 
 結局この選挙での無産政党の成績は、社民党が安部磯雄・亀井貫一郎・小池四郎の3名、労大党が松谷与二郎・杉山元治郎の2名、計5名を当選させたにとどまったが、次の9名が次点にくい込んでいた。   

  社民党 ―― 東京6区・鈴木文治、大阪3区・西尾末広、神奈川2区・片山哲、鹿児島3区・山元亀次郎
  労大党 ―― 東京5区・麻生久、大阪1区・田万清臣、神奈川1区・金井芳次、兵庫1区・河上丈太郎、岩手2区・泉国三郎

 また過去2回の普通選挙とくらべると、得票数は別表のように動いていた(前掲「社会運動の状況」)。 政党別では次の通りである。

  社民 ―― 立候補16名 125,758票
  労大 ―― 立候補13名 134,364票
  其他 ―― 立候補 7名 31,227票


 このうち、「其他」のなかには、共産党が立てた候補者もまざっていた。例えば選挙戦の最中に東京5区の吉田由市候補が治安維持法違反で検挙されたが、それは同候補が共産党の決定で立候補したことを理由とするものであった。昭和5年7月田中清玄を中心とした中央部が検挙されて壊滅状態となった共産党は、昭和6年1月に至って、風間丈吉らによって再建されており、この選挙では主として獄中の幹部を候補者として宣伝を行う方針をとっていた。東京の場合でみると、第3区佐野学、第4区唐沢清八、第5区吉田由市、第6区杉浦啓一を候補者と決定したが、吉田が正式に立候補したほかは、立候補届けを提出せず獄中からの立候補挨拶状を配布する方法がとられていた。

  投票日が近づくに従って、政友会の優勢は動かし難いと予想されたが、誰も300名をこえる圧勝は考えていなかった。例えば東京朝日は政友204、民政146は確実、残り107の議席が接戦になるとみており (東朝、2・19)、また内務省では与党政友会の当選者数を240〜260の間と予想していたという(東側、 2・15)。血盟団事件で井上準之助を失った民政党は、町田忠治を後任の選挙委員長としたが、財界に対する声望は井上には及ばず、選挙資金の調達が困難になったのではないかともみられていた。2月20日が投票日であったが、開票第1日目から政友会の予想を上まわる勝利が明らかとなった。政友会が290名をこえるか、民政党が160名を維持できるかが、第1日目の開票結果からみた関心の焦点となったが、政友303、民政144という最終結果には両党ともに驚かさ れていた。当選者及び得票数は次の通りであった。
第18回総選挙当選者一覧表(昭和7年2月20日施行)
選挙区名の下の数字は有権者総数

  得票数 党派 新旧前 候補者氏名
東京一区 100,403      
  12,592 政友 立川 太郎
  11,848 民政 高橋 義次
  11,402 民政 三木 武吉
  10,865 民政 本田 義成
  10,769 民政 大神田 軍治
東京ニ区 102,904      
  16,170 政友 犬養  健
  16,038 民政 駒井 重次
  14,705 政友 鳩山 一郎
  11,882 社民 安倍 磯雄
  8,742 民政 中島 弥団次
東京三区 90,358      
  14,955 政友 安藤 正純
  13,827 政友 伊藤 仁太郎
  12,062 民政 頼母木 桂吉
  10,024 民政 柳田 宗一郎
東京四区 83,801      
  11,813 政友 磯部  尚
  10,460 政友 国枝 捨次郎
  6,966 中立 朴  春琴
  6,599 政友 中野 勇治郎
東京五区 262,072      
  45,022 政友 三上 英雄
  36,623 政友 牧野 賎男
  30,125 民政 鈴木 富士弥
  29,189 民政 高木 正年
  19,038 民政 斯波 貞吉
東京六区 284,870      
  50,079 政友 前田 米蔵
  43,760 政友 中島 守利
  33,792 民政 中村 継男
  33,596 民政 佐藤  正
  19,319 労大 松谷 与二郎
東京七区 80,590      
  19,447 政友 津雲 国利
  17,733 民政 八並 武治
  14,607 政友 坂本 一角
京都一区 158,106      
  13,595 民政 中村 三之丞
  13,135 政友 鈴木 吉之助
  13,086 政友 鷲野 米太郎
  12,811 民政 川橋 豊治郎
  10,443 中立 福田 関次郎
京都二区 88,165      
  25,257 政友 中野 種一郎
  16,393 政友 磯部 清吉
  14,024 民政 田中 祐四郎
京都三区 73,560      
  13,987 政友 長田 桃蔵
  13,942 政友 芦田  均
  12,992 政友 水島 彦一郎
大阪一区 104,428      
  23,243 政友 板野 友造
  15,105 民政 市松 定吉
  11,200 民政 枡谷 寅吉
大阪二区 73,025      
  18,671 政友 山本 芳治
  13,459 民政 竹田 儀一
  10,524 政友 沼田 嘉一郎
大阪三区 108,536      
  15,040 政友 上田 孝吉
  14,043 民政 内藤 正剛
  13,462 民政 広瀬 徳蔵
  11,371 政友 青田 勝晴
大阪四区 204,570      
  19,643 政友 森田 政義
  17,316 民政 中山 福蔵
  15,800 民政 本田 弥市郎
  14,882 民政 吉川 吉郎兵衛
大阪五区 133,500      
  21,777 政友 喜多 孝治
  18,848 民政 勝田 永吉
  18,510 労大 杉山 元治郎
  17,074 政友 岩崎 幸治郎
大阪六区 91,983      
  (無投票) 政友 山口 義一
  (同) 民政 松田 竹千代
  (同) 政友 井坂 豊光
神奈川一区 128,193      
  32,053 政友 野方 次郎
  26,079 民政 戸井 嘉作
  16,487 民政 三宅  磐
神奈川二区 98,261      
  20,536 政友 川口 義久
  19,666 政友 鈴木 喜三郎
  15,211 民政 小泉 又次郎
  9,865 民政 岩切 重雄
神奈川三区 101,366      
  20,597 政友 胎中 楠右衛門
  18,367 政友 鈴木 英雄
  16,926 政友 河野 一郎
  15,277 民政 平川 松太郎
兵庫一区 161,557      
  22,172 政友 砂田 重政
  20,495 民政 野田 文一郎
  20,198 政友 中井 一夫
  16,807 民政 浜野 徹太郎
  14,366 民政 中 亥歳男
兵庫二区 128,889      
  22,057 政友 蔭山 貞吉
  21,698 政友 立川  平
  18,398 民政 前田 房之助
  13,920 民政 原 淳一郎
兵庫三区 92,890      
  24,497 政友 小林 絹治
  19,589 政友 多木 久米次郎
  16,282 政友 青木 雷三郎
兵庫四区 101,050      
  18,756 政友 原 惣兵衛
  15,860 民政 田中 武雄
  15,068 政友 土井 権大
  12,999 革新 清瀬 一郎
兵庫五区 81,629      
  19,307 政友 若宮 貞夫
  16,689 民政 斎藤 隆雄
  12,829 政友 畑 七右衛門
長崎一区 139,498      
  29,244 政友 西岡 竹次郎
  25,653 政友 向井 倭雄
  19,319 政友 志波 安一郎
  14,069 民政 中村 不二男
  13,065 民政 中川 観秀
長崎二区 104,777      
  19,871 政友 森  肇
  17,745 民政 牧山 耕蔵
  15,209 政友 佐保 畢雄
  14,236 民政 中田 正輔
新潟一区 77,296      
  (無投票) 政友 田辺 熊一
  (同) 政友 山本 悌二郎
  (同) 民政 山田 助作
新潟二区 100,198      
  21,129 政友 松木  弘
  18,985 政友 渡辺 幸太郎
  18,025 政友 出塚 助衛
  12,309 民政 佐藤 与一
新潟三区 134,156      
  20,578 政友 高橋 金治郎
  17,820 政友 山田 又司
  16,829 革新 大竹 貫一
  14,595 民政 原  吉郎
新潟四区 89,217      
  (無投票) 政友 鈴木 義隆
  (同) 政友 武田 徳三郎
  (同) 民政 増田 義一
埼玉一区 121,724      
  20,561 政友 秦  豊助
  19,507 政友 高橋 泰雄
  19,203 民政 松永  東
  18,662 政友 宮崎  一
埼玉二区 99,954      
  23,728 政友 横川 重次
  18,319 政友 長島 隆二
  18,132 政友 一瀬 一二
  16,799 民政 高橋 守平
埼玉三区 84,710      
  18,819 民政 野中 徹也
  18,736 政友 出井 兵吉
  17,440 政友 門田 新松
群馬一区 134,782      
  27,567 政友 中島 知久平
  23,818 政友 青木 精一
  15,449 民政 飯塚 春太郎
  14,655 民政 清水 留三郎
  13,985 政友 増田 金作
群馬二区 104,740      
  25,529 政友 畑  桃作
  21,638 政友 木暮 武太夫
  13,829 政友 篠原 義政
  13,765 民政 木桧 三四郎
千葉一区 122,071      
  22,192 民政 鈴木  隆
  22,157 民政 多田 満長
  20,735 政友 本多 貞次郎
  18,758 政友 川島 正次郎
千葉二区 91,329      
  (無投票) 民政 鵜沢 宇八
  (同) 政友 鳩山 秀夫
  (同) 政友 今井 健彦
千葉三区 107,227      
  17,959 民政 土屋 清三郎
  17,812 政友 竹沢 太一
  17,658 政友 小高 長三郎
  15,771 政友 森  矗昶
茨城一区 115,951      
  24,664 政友 内田 信也
  23,050 政友 宮古 啓三郎
  15,171 政友 葉梨 新五郎
  12,187 民政 豊田 豊吉
茨城二区 74,414      
  19,586 政友 石井 三郎
  19,551 政友 山崎  猛
  14,832 民政 中井川 浩
茨城三区 119,483      
  22,339 政友 飯村 五郎
  22,045 政友 堀江 正三郎
  17,403 政友 佐藤 洋之助
  15,267 中立 風見  章
栃木一区 116,293      
  22,364 政友 船田  中
  21,659 政友 森  恪
  20,892 政友 坪山 徳弥
  14,530 民政 高田 耘平
  13,031 民政 岡田 喜久治
栃木二区 109,018      
  20,726 政友 松村 光三
  19,813 政友 岡本 一巳
  18,267 政友 上野 基三
  12,045 民政 栗原 彦三郎
奈良全区 129,763      
  22,622 中立 江藤 源九郎
  16,230 政友 岩本 武助
  14,227 民政 八木 逸郎
  12,843 政友 福井 甚三
  11,926 民政 松尾 四郎
三重一区 149,629      
  26,165 政友 加藤 久米四郎
  24,249 政友 伊坂 秀五郎
  22,056 政友 堀川 美哉
  18,464 民政 川崎  克
  15,084 民政 松田 正一
三重二区 100,896      
  19,960 政友 浜田 国松
  15,324 中立 尾崎 行雄
  15,093 政友 後藤  脩
  11,012 民政 池田 敬八
愛知一区 182,048      
  20,931 政友 加藤 鐐五郎
  10,573 民政 小山 松寿
  18,532 政友 田中 善立
  16,663 民政 横山 一格
  15,336 政友 瀬川 嘉助
愛知二区 92,651      
  20,499 政友 丹下 茂十郎
  15,496 民政 西脇  晋
  15,211 政友 山田 佐一
愛知三区 81,476      
  19,905 政友 滝  正雄
  16,995 民政 加藤 鯛一
  15,303 政友 田中 貞二
愛知四区 94,668      
  24,496. 政友 小笠原 三九郎
  22,458 政友 小林  リ
愛知五区 78,814      
  15,290 政友 大口 喜六
  15,038 政友 近藤 寿市郎
  13,993 中立 鈴木 正吾
静岡一区 152,359      
  24,788 政友 山口 忠五郎
  22,155 政友 宮本 雄一郎
  21,575 政友 深沢 豊太郎
  15,574 民政 海野 数馬
  15,223 民政 平野 光雄
静岡二区 105,285      
  20,162 政友 仁田 大八郎
  18,960 政友 春名 成章
  15,762 政友 勝又 春一
  13,848 民政 岸  衛
静岡三区 113,376      
  27,031 政友 太田 正孝
  21,453 政友 倉元 要一
  13,594 民政 永田 善三郎
  13,593 民政 井上 剛一
山梨全区 129,830      
  24,214 政友 田辺 七六
  20,215 政友 川手 甫雄
  17,261 政友 大崎 清作
  15,671 政友 竹内 友治郎
  15,622 民政 福田 虎亀
滋賀全区 154,756      
  23,688 政友 清水 銀蔵
  20,495 政友 服部 岩吉
  19,861 民政 堤 康次郎
  17,651 政友 仙波 久良
  16,288 民政 青木 亮貫
岐阜一区 81,149      
  17,263 政友 匹田 鋭吉
  16,726 政友 大野 伴睦
  13,579 民政 清  寛
岐阜二区 72,823      
  19,631 政友 佐竹 直太郎
  17,028 政友 楠  基道
  11,436 民政 後藤 亮一
岐阜三区 99,393      
  (無投票) 政友 牧野 良三
  (同) 民政 古屋 慶隆
  (同) 政友 平井 信四郎
長野一区 90,159      
  22,636 民政 小坂 順造
  20,542 民政 松本 忠雄
  19,595 政友 山本 慎平
長野二区 82,533      
  20,128 政友 山本 荘一郎
  17,322 民政 小山 邦太郎
  13,139 民政 鷲沢 与四二
長野三区 102,894      
  18,279 政友 小川 平吉
  18,108 政友 平野 桑四郎
  13,392 政友 有馬 浅雄
  12,214 民政 戸田 由美
長野四区 80,910      
  19,645 政友 高橋  保
  17,504 政友 植原 悦二郎
  12,250 民政 百瀬  渡
宮城一区 131,421      
  23,052 民政 内ヶ崎 作三郎
  21,261 政友 守屋 栄夫
  20,449 政友 宮沢 清作
  19,784 政友 菅原  伝
  17,518 政友 佐々木 家寿治
宮城二区 87,092      
  18,704 政友 星  廉平
  17,798 政友 大石 倫治
  13,488 民政 村松 久義
福島一区 89,629      
  21,764 政友   堀切 善兵衛
  19,271 政友 菅野 善右衛門
  17,232 民政 林  平馬
福島二区 129,367      
  20,074 政友 八田 宗吉
  19,758 政友 小島 智善
  18,951 政友 助川 啓四郎
  15,674 民政 寅彦
  12,405 中立 中野 寅吉
福島三区 73,722      
  19,229 政友 佐藤 庄太郎
  16,296 民政 比佐 昌平
  15,799 政友 鈴木 辰三郎
岩手一区 84,680      
  22,743 政友 田子 一民
  17,340 政友 八角 三郎
  17,032 政友 熊谷  巌
岩手二区 112,947      
  26,750 政友 志賀 和多利
  23,604 政友 小野寺 章
  16,974 政友 広瀬 為久
  16,974 民政 高橋 寿太郎
青森一区 94,830      
  25,811 政友 藤井 達也
  24,554 政友 梅村  大
  17,078 民政 工藤 鉄男
青森二区 74,850      
  23,898 政友 工藤 十三雄
  20,955 政友 兼田 秀雄
  11,383 民政 菊地 良一
山形一区 116,550      
  28,138 政友 西方 利馬
  26,012 政友 高橋 熊次郎
  23,751 政友 戸田 虎雄
  14,801 民政 佐藤  啓
山形二区 100,082      
  (無投票) 政友 熊谷 直太
  (同) 民政 清水 徳太郎
  (同) 政友 松岡 俊三
  (同) 民政 佐藤 理吉
秋田一区 103,056      
  23,085 政友 杉本 国太郎
  22,667 政友 鈴木 安孝
  16,164 民政 田中 隆三
  15,294 民政 町田 忠治
秋田二区 95,505      
  26,365 政友 片野 重脩
  21,250 政友 小山田 義孝
  14,587 民政 猪股 謙二郎
福井全区 132,551      
  (無投票) 民政 漆田 敬一郎
  (同) 政友 猪野毛 利栄
  (同) 政友 熊谷 五右衛門
  (同) 民政 斎藤 直橘
  (同) 政友 山本 条太郎
石川一区 83,853      
  23,289 政友 中橋 徳五郎
  20,151 民政 永井 柳太郎
  17,383 政友 箸本 太吉
石川二区 76,690      
  (無投票) 政友 青山 憲三
  (同) 民政 桜井 兵五郎
  (同) 政友 益谷 秀次
富山一区 84,687      
  22,019 政友 石坂 豊一
  21,172 政友 高見 之通
  16,390 民政 野村 嘉六
富山二区 80,679      
  22,136 政友 島田 七郎右衛門
  21,373 政友 土倉 宗明
  14,616 民政 松村 謙三
鳥取全区 103,882      
  24,189 政友 豊田  収
  22,739 政友 矢野 晋也
  15,447 中立 由谷 義治
  15,388 民政 山枡 儀重
島根一区 93,131      
  23,274 民政 桜内 幸雄
  19,098 民政 木村 小左衛門
  15,161 民政 原 夫次郎
島根二区 79,491      
  19,728 政友 島田 俊雄
  18,230 政友 沖島 鎌三
  15,992 民政 俵 孫一
岡山一区 147,054      
  20,292 政友 岡田 忠彦
  18,446 政友 横川 泰造
  17,645 政友 難波 清人
  16,728 政友 大山 斐瑳麿
  16,623 政友 久山 知之
岡山二区 145,515      
  26,124 政友 小谷 節夫
  23,523 政友 犬養  毅
  19,557 民政 小川 郷太郎
  17,600 政友 星島 二郎
  15,404 政友 白神 邦二
広島一区 121,365      
  23,691 政友 岸田 正記
  17,800 政友 名川 侃市
  14,642 民政 荒川 五郎
  14,599 民政 藤田 若水
広島二区 108,761      
  18,303 政友 渡辺  伍
  17,005 政友 望月 圭介
  14,368 民政 山道 襄一
  13,172 民政 田中  貢
広島三区 137,377      
  19,836 政友 宮沢  裕
  17,168 政友 米田 規矩馬
  17,023 政友 森田 福市
  14,466 民政 作田 高太郎
  13,722 民政 横山 金太郎
山口一区 119,594      
  (無投票) 政友 久原 房之助
  (同) 政友 保良 浅之助
  (同) 政友 庄 晋太郎
  (同) 民政 藤井 啓一
山口二区 134,640      
  (無投票) 政友 松岡 洋右
  (同) 政友 窪井 義道
  (同) 政友 西村 茂生
  (同) 民政 沢本 与一
  (同) 政友 児玉 右二
和歌山一区 98,198      
  24,305 政友 木本 主一郎
  18,846 政友 玉置 吉之丞
  15,896 政友 松山 常次郎
和歌山二区 84,414      
  23,111 政友 世耕 弘一
  16,951 政友 三尾 邦三
  12,352 民政 小山 谷蔵
徳島一区 79,436      
  17,455 政友 紅露  昭
  16,260 政友 生田 和平
  14,360 民政 谷原  公
徳島二区 79,080      
  20,733 政友 秋田  清
  12,761 政友 伊藤 皆次郎
  11,218 民政 真鍋  勝
香川一区 76,987      
  19,367 政友 宮脇 長吉
  18,921 政友 上原 平太郎
  13,495 民政 戸沢 民十郎
香川二区 80,814      
  21,143 政友 山下 谷次
  19,075 政友 三土 忠造
  14,584 民政 矢野 庄太郎
愛媛一区 86,617      
  20,103 政友 大本 貞太郎
  18,985 民政 武知 勇記
  18,888 政友 須之内 品吉
愛媛二区 81,777      
  18,155 政友 森 昇三郎
  17,975 政友 河上 哲太
  12,929 民政 村上 紋四郎
愛媛三区 74,426      
  17,201 政友 白城 定一
  16,965 政友 清家 吉次郎
  14,178 政友 山村 豊次郎
高知一区 80,406      
  17,499 政友 田村  実
  17,301 政友 中谷 貞頼
  14,189 中立 富田 幸次郎
高知二区 80,341      
  18,950 政友 林  譲治
  16,621 政友 依光 好秋
  10,630 民政 川淵 洽馬
福岡一区 117,308      
  19,982 政友 原口 初太郎
  19,557 中立 中野 正剛
  19,278 政友 宮川 一貫
  13,260 政友 吉田 鞆明
福岡二区 143,039      
  24,098 政友 実岡 半之助
  23,513 社民 亀井 貫一郎
  22,415 政友 田尻 生五
  16,785 民政 田島 勝太郎
  16,711 民政 高野 喜六
福岡三区 134,927      
  17,638 政友 野田 俊作
  17,385 政友 貝谷 真孜
  16,767 政友 山崎 達之輔
  15,126 政友 高倉  寛
  14,542 政友 樋口 典常
福岡四区 103,656      
  20,767 政友 内野 辰次郎
  19,943 政友 坂井 大輔
  14,379 社民 小池 四郎
  13,145 民政 勝  正憲
大分一区 123,867      
  24,411 政友 金光 庸夫
  18,544 政友 野依 秀市
  18,009 政友 塩月  学
  17,061 民政 松田 源治
大分二区 78,332      
  (無投票) 政友 綾部 健太郎
  (同) 政友 清瀬 規矩雄
  (同) 民政 重松 重治
佐賀一区 59,400      
  15,363 政友 田中 亮一
  13,806 政友 石川 又八
  12,503 民政 池田 秀雄
佐賀二区 78,512      
  18,554 政友 藤生 安太郎
  14,599 政友 田口 文次
  13,848 民政 森  峰一
熊本一区 134,144      
  22,875 政友 木村 正義
  22,612 政友 松野 鶴平
  22,057 政友 村田 虎之助
  18,944 中立 安達 謙蔵
  14,439 民政 大麻 唯男
熊本二区 144,325      
  27,032 政友 上塚  司
  26,986 政友 三善 信房
  26,686 政友 中野 猛雄
  15,621 民政 伊豆 富人
  14,403 民政 深水  清
宮崎全区 156,226      
  17,209 政友 佐藤 重遠
  16,911 政友 平島 敏夫
  14,876 政友 渡辺 与七
  12,911 政友 田尻 藤四郎
  11,354 政友 水久保 甚作
鹿児島一区 121,782      
  18,431 政友 原  耕
  17,913 政友 床次 竹二郎
  16,417 政友 蔵園 三四郎
  14,216 政友 井上 知治
  13,375 政友 中村 嘉寿
鹿児島二区 110,090      
  21,531 政友 東郷  実
  16,874 政友 崎川 武夫
  16,732 政友 天辰 正守
  14,829 政友 寺田 市正
鹿児島三区 73,994      
  15,900 政友 金井 正夫
  15,781 政友 津崎 尚武
  11,339 政友 永田 良吉
沖縄全区 139,557      
  16,951 政友 金城 紀光
  13,917 政友 花城 永渡
  12,609 政友 崎山 嗣朝
  9,766 政友 竹下 文隆
  9,162 民政 伊礼  肇
北海道一区 116,073      
  20,136 政友 寿原 英太郎
  18,030 民政 山本 厚三
  16,208 政友 丸山 浪弥
  13,589 政友 岡田 伊太郎
北海道二区 90,919      
  19,970 政友 東  武
  19,538 政友 林  路一
  15,628 政友 田中 喜代松
  12,658 民政 坂東 幸太郎
北海道三区 82,584      
  18,313 政友 佐々木 平次郎
  17,221 政友 林  儀作
  13,227 民政 大島 寅吉
北海道四区 110,357      
  18,166 政友 板谷 順助
  13,267 政友 松実 喜代太
  12,541 民政 山本 市英
  11,696 中立 松尾 孝之
  10,645 民政 手代木 隆吉
北海道五区 110,051      
  19,044 政友 三井 徳宝
  18,551 政友 尾崎 天風
  18,261 政友 木下 成太郎
  11,807 民政 小池 仁郎

なお前表中、千葉三区では森矗昶が当選を辞退したため、次点の岩瀬亮(政友・新)が繰上げ当選者となっている。



第六一回議会の召集

 総選挙後の特別議会は通常議会の召集手続によるため、早くても投票日の2ケ月後でなければ開くことができず、憲法も5ケ月以内に召集すればよいと規定していた(「第六一回帝国議会貴族院解説」参照)。犬養内閣も当初は、選挙スローガンとした産業5ケ年計画も盛り 込んだ実行予算を編成してから特別議会を召集するつもりでいた(昭和7年度予算案は解散で未成立のため、前年度予算施行)。しかし、満州事変費・上海事変費支出についての枢密院側の意向により、3月中に臨時議会を召築しなければならなくなってきた。

  すなわち、これまで事変費の支出は枢密院の審査を 経て緊急勅令による財政処分(議会の事後承認が必要)として行われてきたが、総選挙終了後も特別議会召集までこの方式を続けようとする内閣側の態度に枢密院が反発、選挙が終わった以上、3月中にも臨時議会を 開くべきだと強く主張した。内閣側も結局枢密院の意向に従うこととし、召集日3月18日、会期5日として第61回議会を召集することとなった。従ってこの議会は、総選挙後最初の議会であるが、特別議会としてではなく臨時議会として召集されたものであった。

  この議会における議長・副議長、全院・常任委員長、政府側委員、議員の党派別所属は次の通りであった。 なお、大正14年第50回議会の決議により、以後議長・副議長は党籍を離脱していたが、この議会で正・ 副議長に当選した秋田清・植原悦二郎はともに党籍を 離れず、後述するように、野党の攻撃に対してもこの態度を押し通して行った。

議長   秋田  清(政友会・徳島) 
副議長   植原 悦二郎(政友会・長野)
     
全院委員長   広瀬 為久(政友会・岩手)
     
常任委員長 予算委員長 山崎 達之輔(政友会・福岡)
  決算委員長 川口 義久(政友会・神奈川)
  請願委員長 清水 銀蔵(政友会・滋賀)
  懲罰委員長 津崎 尚武(政友会・鹿児島)
     
国務大臣 内閣総理大臣 犬養  毅
  外務大臣 芳沢 謙吉
  内務大臣(兼任) 犬養  毅
  大蔵大臣 高橋 是清
  陸軍大臣 荒木 貞夫
  海軍大臣 大角 岑生
  司法大臣 鈴木 喜三郎
  文部大臣 鳩山 一郎
  農林大臣 山本 悌二郎
  商工大臣 前田 米蔵
  逓信大臣 三土 忠造
  鉄道大臣 床次 竹二郎
  拓務大臣 秦  豊助
     
政府委員(3・18発令) 内閣書記官長 森  恪
  法制局長官 島田 俊雄
  法制局参事官 黒崎 定三
  金森 徳次郎
  外務政務次官 岩城 隆徳
  外務参与官 高橋 熊次郎
  外務書記官 松宮  順
  内務政務次官 松野 鶴平
  内務参与官 藤井 達也
  大蔵政務次官 堀切 善兵衛
  大蔵参与官 太田 正孝
  大蔵省主計局長 藤井 真信
  大蔵省理財局長 富田 勇太郎
  大蔵書記官 川越 丈雄
  陸軍政務次官 若宮 貞夫
  陸軍参与官 土岐  章
  陸軍主計監 小野寺 長治郎
  陸軍少将 山岡 重厚
  陸軍一等主計正 大内 球三郎
  海軍政務次官 堀田 正恒
  海軍参与官 西村 茂生
  海軍主計中将 加藤 亮一
  海軍少将 豊田 貞次郎
  海軍主計大佐 荒木 彦弼
  司法政務次官 熊谷 直太
  司法参与官 名川 侃一
  文部政務次官 安藤 正純
  文部参与官 山下 谷次
  農林政務次官 砂田 重政
  農林参与官 今井 健彦
  商工政務次官 中島 知久平
  商工参与官 加藤 鐐五郎
  逓信政務次官 内田 信也
  逓信参与官 坂井 大輔
  逓信省経理局長 富安 謙次
  鉄道政務次官 若尾 璋八
  鉄道参与官 野田 俊作
  拓務政務次官 加藤 久米四郎
  拓務参与官 牧野 賎男
  拓務書記官 杉田 芳郎
  関東庁財務部長 西山 左内
     
政府委員追加(会期中発令) 外務省通商局長 武富 敏彦
  内務省警保局長 森岡 二朗
  大蔵省銀行局長 大久保 偵次
  鉄道省経理局長 工藤 義男
     
党派別所属議員氏名    
     
召集日各会派所属議員数
(昭和7年3月18日)

立憲政友会 303名
  立憲民政党 144名
  第一控室 18名
  無所属 1名
  466名
     
立憲政友会(303名) 東京 立川 太郎
  本田 義成
  犬養  健
  鳩山 一郎
  安藤 正純
  伊藤 仁太郎
  磯辺  尚
  国枝 捨次郎
  中野 勇治郎
  三上 英雄
  牧野 賎男
  前田 米蔵
  中島 守利
  津雲 国利
  坂本 一角
  京都 鈴木 吉之助
  鷲野 米太郎
  中野 種一郎
  磯辺 清吉
  長田 桃蔵
  芦田  均
  水島 彦一郎
  大阪 板野 友造
  山本 芳治
  沼田 嘉一郎
  上田 孝吉
  青田 勝晴
  森田 正義
  喜多 孝治
  岩崎 幸治郎
  山口 義一
  井阪 豊光
  神奈川 野方 次郎
  川口 義久
  鈴木 喜三郎
  胎中 楠右衛門
  鈴木 英雄
  河野 一郎
  兵庫 砂田 重政
  中井 一夫
  蔭山 貞吉
  立川  平
  小林 絹治
  多木 久米次郎
  青木 雷三郎
  原 惣兵衛
  土井 権大
  若宮 貞夫
  畑 七右衛門
  長崎 西岡 竹次郎
  向井 倭雄
  志波 安一郎
  森  肇
  佐保 畢雄
  新潟 山本 悌二郎
  田辺 熊一
  松木  弘
  渡辺 幸太郎
  出塚 助衛
  加藤 知正
  高橋 金治郎
  山田 又司
  鈴木 義隆
  武田 徳三郎
  埼玉 秦  豊助
  高橋 泰雄
  宮崎  一
  横川 重次
  長島 隆二
  一瀬 一二
  出井 兵吉
  門田 新松
  群馬 中島 知久平
  青木 精一
  増田 金作
  畑  桃作
  木暮 武太夫
  篠原 義政
  千葉 鈴木  隆
  本多 貞次郎
  川島 正次郎
  鳩山 秀夫
  今井 健彦
  竹沢 太一
  小高 長三郎
  岩瀬 亮
  茨城 内田 信也
  宮古 啓三郎
  葉梨 新五郎
  石井 三郎
  山崎  猛
  飯村 五郎
  堀江 正三郎
  佐藤 洋之助
  栃木 船田  中
  森  恪
  坪山 徳弥
  松村 光三
  岡本 一已
  上野 基三
  奈良 江藤 源九郎
  岩本 武助
  福井 甚三
  三重 加藤 久米四郎
  伊坂 秀五郎
  堀川 美哉
  浜田 国松
  後藤  脩
  愛知 加藤 鐐五郎
  田中 善立
  瀬川 嘉助
  丹下 茂十郎
  山田 佐一
  滝  正雄
  田中 貞二
  小笠原 三九郎
  小林  リ
  大口 喜六
  近藤 寿市郎
  静岡 山口 忠五郎
  宮本 雄一郎
  深沢 豊太郎
  仁田 大八郎
  春名 成章
  勝又 春一
  太田 正孝
  倉元 要一
  山梨 田辺 七六
  川手 甫雄
  大崎 清作
  竹内 友治郎
  滋賀 清水 銀蔵
  服部 岩吉
  仙波 久良
  岐阜 匹田 鋭吉
  大野 伴睦
  佐竹 直太郎
  楠  基道
  牧野 良三
  平井 信四郎
  長野 山本 慎平
  山本 荘一郎
  小川 平吉
  平野 桑四郎
  有馬 浅雄
  高橋  保
  植原 悦二郎
  宮城 守屋 栄夫
  宮沢 清作
  菅原  伝
  佐々木 家寿治
  星  廉平
  大石 倫治
  福島 堀切 善兵衛
  菅野 善右衛門
  八田 宗吉
  小島 智善
  助川 啓四郎
  佐藤 庄太郎
  鈴木 辰三郎
  岩手 田子 一民
  八角 三郎
  熊谷  厳
  志賀 和多利
  小野寺  章
  広瀬 為久
  青森 藤井 達也
  梅村  大
  工藤 十三雄
  兼田 秀雄
  山形 西方 利馬
  高橋 熊次郎
  戸田 虎雄
  熊谷 直太
  松岡 俊三
  秋田 杉本 国太郎
  鈴木 安孝
  片野 重脩
  小山田 義孝
  福井 熊谷 五右衛門
  山本 条太郎
  猪野毛 利栄
  石川 中橋 徳五郎
  箸本 太吉
  青山 憲三
  益谷 秀次
  富山 石坂 豊一
  高見 之通
  島田 七郎右衛門
  土倉 宗明
  鳥取 豊田  収
  矢野 晋也
  島根 島田 俊雄
  沖島 鎌三
  岡山 岡田 忠彦
  横山 泰造
  難波 清人
  大山 斐瑳麿
  久山 知之
  小谷 節夫
  犬養  毅
  星島 二郎
  白神 邦二
  広島 岸田 正記
  名川 侃市
  渡辺  伍
  望月 圭介
  宮沢  裕
  米田 規矩馬
  森田 福市
  山口 久原 房之助
  保良 浅之助
  庄  晋太郎
  松岡 洋右
  窪井 義道
  西村 茂生
  児玉 右二
  和歌山 木本 主一郎
  玉置 吉之丞
  松山 常次郎
  世耕 弘一
  三尾 邦三
  徳島 紅露  昭
  生田 和平
  秋田  清
  伊藤 皆次郎
  香川 宮脇 長吉
  上原 平太郎
  山下 谷次
  三土 忠造
  愛媛 大本 貞太郎
  須之内 品吉
  森 昇三郎
  河上 哲太
  白城 定一
  清家 吉次郎
  山村 豊次郎
  高知 田村  実
  中谷 貞頼
  林  譲治
  依光 好秋
  福岡 原口 初太郎
  宮川 一貫
  吉田 鞆明
  実岡 半之助
  田尻 生五
  野田 俊作
  貝谷 真孜
  山崎 達之輔
  高倉 寛
  樋口 典常
  内野 辰次郎
  坂井 大輔
  大分 金光 庸夫
  野依 秀市
  塩月  学
  綾部 健太郎
  清瀬 規矩雄
  佐賀 田中 亮一
  石川 又八
  藤生 安太郎
  田口 文次
  熊本 木村 正義
  松野 鶴平
  村田 虎之助
  上塚  司
  三善 信房
  中野 猛雄
  宮崎 佐藤 重遠
  平島 敏夫
  渡辺 与七
  田尻 藤四郎
  水久保 甚作
  鹿児島 原  耕
  床次 竹二郎
  蔵園 三四郎
  井上 知治
  中村 嘉寿
  東郷  実
  崎山 武夫
  天辰 正守
  寺田 市正
  金井 正夫
  津崎 尚武
  永田 良吉
  沖縄 金城 紀光
  花城 永渡
  崎山 嗣朝
  竹下 文隆
  北海道 寿原 英太郎
  丸山 浪弥
  岡田 伊太郎
  東  武
  林  路一
  田中 喜代松
  佐々木 平次郎
  林  儀作
  板谷 順助
  松実 喜代太
  松尾 孝之
  三井 徳宝
  尾崎 天風
  木下 成太郎
     
立憲民政党(144名) 東京 高橋 義次
  三木 武吉
  大神田 軍治
  駒井 重次
  中島 弥団次
  頼母木 桂吉
  柳田 宗一郎
  鈴木 富士弥
  高木 正年
  斯波 貞吉
  中村 継男
  佐藤  正
  八並 武治
  京都 中村 三之丞
  川橋 豊次郎
  田中 祐四郎
  大阪 一松 定吉
  枡谷 寅吉
  竹田 儀一
  内藤 正剛
  広瀬 徳蔵
  中山 福蔵
  本田 弥市郎
  吉川 吉郎兵衛
  勝田 永吉
  松田 竹千代
  神奈川 戸井 嘉作
  三宅  磐
  小泉 又次郎
  岩切 重雄
  平川 松太郎
  兵庫 野田 文一郎
  浜野 徹太郎
  中 亥歳男
  前田 房之助
  原 淳一郎
  田中 武雄
  斎藤 隆夫
  長崎 中村 不二男
  中川 観秀
  牧山 耕蔵
  中田 正輔
  新潟 山田 助作
  佐藤 与一
  原  吉郎
  増田 義一
  埼玉 松永  東
  高橋 守平
  野中 徹也
  群馬 飯塚 春太郎
  清水 留三郎
  木桧 三四郎
  千葉 多田 満長
  鵜沢 宇八
  土屋 清三郎
  茨城 豊田 豊吉
  中井川 浩
  栃木 高田 耘平
  岡田 喜久治
  栗原 彦三郎
  奈良 八木 逸郎
  松尾 四郎
  三重 川崎  克
  松田 正一
  池田 敬八
  愛知 小山 松寿
  横山 一格
  西脇  晋
  加藤 鯛一
  武富  済
  静岡 海野 数馬
  平野 光雄
  岸  衛
  永田 善三郎
  井上 剛一
  山梨 福田 虎亀
  滋賀 堤 康次郎
  青木 亮貫
  岐阜 清  寛
  古屋 慶隆
  長野 小坂 順造
  松本 忠雄
  小山 邦太郎
  鷲沢 与四二
  戸田 由美
  百瀬  渡
  宮城 内ヶ崎 作三郎
  村松 久義
  福島 林  平馬
  鈴木 虎彦
  比佐 昌平
  岩手 高橋 寿太郎
  青森 工藤 鉄男
  菊池 良一
  山形 佐藤  啓
  佐藤 理吉
  清水 徳太郎
  秋田 田中 隆三
  町田 忠治
  猪股 謙二郎
  福井 斎藤 直橘
  添田 敬一郎
  石川 永井 柳太郎
  桜井 兵五郎
  富山 野村 嘉六
  松村 謙三
  鳥取 山枡 儀重
  島根 桜内 幸雄
  木村 小左衛門
  原 夫次郎
  俵  孫一
  岡山 小川 郷太郎
  広島 荒川 五郎
  藤田 若水
  山道 襄一
  田中  貢
  作田 高太郎
  横山 金太郎
  山口 藤井 啓一
  沢本 与一
  和歌山 小山 谷蔵
  徳島 谷原  公
  真鍋  勝
  香川 戸沢 民十郎
  矢野 庄太郎
  愛媛 武知 勇記
  村上 紋四郎
  高知 川淵 洽馬
  福岡 田島 勝太郎
  高野 喜六
  勝  正憲
  大分 松田 源治
  重松 重治
  佐賀 池田 秀雄
  森 峰一
  熊本 大麻 唯男
  伊豆 富人
  深水  清
  沖縄 伊礼  肇
  北海道 山本 厚三
  坂東 幸太郎
  大島 寅吉
  手代木 隆吉
  小池 仁郎
     
第一控室(18名)    
〔社会民衆党〕 東京 安部 磯雄
  福岡 亀井 貫一郎
  小池 四郎
〔全国労農大衆党〕 東京 松谷 与二郎
  大阪 杉山 元治郎
〔革新党〕 兵庫 清瀬 一郎
  新潟 大竹 貫一
〔無所属〕 東京 朴  春琴
  京都 福田 関次郎
  茨城 風見  章
  三重 尾崎 行雄
  愛知 鈴木 正吾
  福島 中野 寅吉
  鳥取 由谷 義治
  高知 富田 幸次郎
  福岡 中野 正剛
  熊本 安達 謙蔵
  北海道 山本 市英
     
無所属(1名) 岐阜 後藤 亮一




内閣改造問題

 この議会開会を前にして、政府側では中橋内相が病気のため登院出来そうにもない、との問題がおこってきた。政友会としては、第59回議会で浜口首相の不登院を攻撃してきた手前、内相欠席のまま議会にのぞむことは具合の悪いことであったが、そのうえ野党や貴族院には桜田門事件(「第六〇回帝国議会貴族院解説」)の責任をとって内相は辞職すべきだとの要求が高まっており、政府・与党側もこの問題の処理に苦慮しなけれぱならなくなった。桜田門事件では警備責任者として警視総監を免職するなどの処置がとられたが、閣僚、とくに内相が責任をとってやめないのは不都合だというのが野党側の言い分であった。政府側では事件の責任問題は解決ずみという態度であったが、内相の不登院とからめて問題をむし返されるのは避けたいという空気が強く、そこから内相更迭を中心とした内閣改造問題がもちあがってきた。

  はじめ中橋内相は辞職の意志なしと伝えられ、議会開会がせまるにつれて果して円満な更迭が実現できるかどうかが話題となっていたが、3月15日私邸を訪れた犬養首相が、政府の直面している情勢を述べて婉曲に決意を促すと、中橋はすこぶるあっさりと辞意を 表明し、内閣改造もスムースに実現するかにみえた。16日付けの新聞は、鈴木喜三郎法相が内相に、貴族院から川村竹治が法相に就任することとなり「けふ親任式挙行」(東朝、3・16)と報じた。しかし実際に行われた親任式は、犬養首相を兼任内相に任命するというものであり、内相後任人事をめぐって政友会内部の派閥対立が激化したことを示すものであった。すでに鈴木の内相就任は政友会内の反鈴木派を刺激し、党内対立を深刻化することになると予想されていたが、反鈴木派の中心人物の1人で幹事長の地位を占めていた久原房之助は、この人事の実現を阻止するため、すばやく行動を起こしていた。15日深夜、16日早朝と再度にわたって犬養首相を訪問した久原は、鈴木の内 相就任に異議を唱えた。このために首相もやむなく内相を兼任して臨時議会を切り抜け、党内の情勢をみて議会後に改造を行う方針に切りかえたのであった。

  鈴木はすでに田中内閣の内相として最初の普選を指揮し、選挙干渉を非難されて辞職したという経歴の持主であったが、政友会内部では鳩山一郎・森恪などを 中心とした鈴木派と呼ばれる大勢力を築いており、今回の総選挙では貴族院議員を辞任し、神奈川2区から立候補、高点当選を果たしていた。この貴族院から衆議院へのくらがえは、明らかに政友会総裁の地位をねらったものであり、そのためには、地方に勢力を伸ばすのに好都合な内相の椅子にすわることを強く望んでいたのであった。党内に独自の勢力を持たない犬養としては、鈴木の希望を無視するわけにはゆかなかったが、新興勢力として力を伸ばしてきている久原としては、鈴木に内相の椅子を与えることが、後継総裁の地位が予約されたかの如き感を与えることを恐れたのであった。従って後任内相をめぐる内紛は、総裁争奪の前哨戦の意味を持つものにほかならなかった。

  この久原の行動は鈴木系を激怒させ、書記官長・森恪は、首相の裁断がこうしたことで阻止されるようでは政務の円満な運用は望めないとして辞意をもらす有様であった。しかし犬養としても久原の言い分をとり入れるつもりはなく、一時久原の面目を立てたうえで既定の方針を実現する考えであったとみられる。また党内で鈴木派と対抗していた床次派、旧政友系(岡崎・ 望月・三土ら)も久原に同調せず、孤立の形勢となった久原は、議会開会中の3月23日夜、ひそかに鈴木と会談して鈴木攻撃の鋒をおさめた。第61回議会の閉院式の行われた25日午後、最初の予定通り、内相に鈴木喜三郎、法相に川村竹治が任命され、内閣改造問題は幕となった。しかしここにあらわれた派閥対立は、以後もくすぶりつづけることになり、政友会の絶対多数の威力を弱める1つの要因となってゆくのであった。



衆議院の状況

 第61回議会に提出された議案は、満州事変・上海事変関係の経費に関するものが主であり(緊急勅令による財政処分事後承諾案・追加予算案・事変関係経費支弁のための公債発行法案など)、これらの事変議案については野党側も全面的に賛成していた。開会冒頭に貴族院の場合と同じく「陸海軍将兵ニ対スル感謝決議案」 が提出され、全会一致で可決されたことは、もはや議場には満州事変批判の空気が全くみられなくなってい ることを示していた。

  事変関係以外では、金輸出再禁止の緊急勅令事後承諾案が出されたが、民政党はこのかつての同党の中心的政策を否定した案件に対しては論争をいどんだ。まず堤康次郎は、再禁止を見越したドル買いによる不当な利得を得たものには非常利得税を課すべきだと主張 し、また小川郷太郎は再禁止の結果、物価は上がったが賃金や俸給はもとのままではないか、と追求したが(速記録第2号参照)、金本位制再建がどうしても必要だとする観点は強調されておらず、迫力に欠けていた。この議案も絶対多数により問題なく可決された。

  民政党はこの議会では桜田門事件についての責任問題をとりあげ、貴族院の野党派と連結して政府を追及する方針を立てており、斉藤隆夫を立てて緊急質問を 行ったが(速記録第2号参照)、中橋内相も辞職していてさしたる効果は期待できなかった。そこで正・副議長が党籍離脱を拒否するという予期しない出来事にとびついて行った。すなわち、まず工藤鉄男を立てて、全院委員長選挙に先立って議事進行の発言という形を とって、議長・副議長は本院の決議先例を重んずる意志はないのかと追及した。これに対して秋田清議長が、かつての大正14年の決議は希望決議にすぎず、また 議長が厳正公平に職責を尽くすか否かは党派への所属とは関係ないとつっぱねると、会期最終日の3月24日、「現任議長及ビ副議長ハ院議ヲ尊重スベシ」との決議案を提出したが、多数で否決されることは眼にみえていた。  

  その他の問題としては、民政党の武富済が「帝都治安ニ関スル緊急質問」、社民党の亀井貫一郎が「議会否認思想ニ依ル直接行動ノ傾向ニ対スル緊急質問」を行い、また清瀬一郎らから「議会否認ノ風潮ニ関スル質問主意書」が提出されているが、これらの動きは、ファッショ勢力拡大についての不安感が議会のなかでも強く感ぜられるようになったことを示すものであった。政府から提出された満州事変費についての昭和7年度追加予算案は、4、5月分のみであり、従って5月には次の臨時議会召集が予定されていたわけであるが、そのわずか2ケ月の間に、5・15事件によって政治の様相は一変することになるのであった。

(古屋哲夫)